壁があって特に練習している曲には少しずつの進歩がある。
が、過去に済ませた簡単な曲が駄目になっていた。
之の繰り返し。
もうこれは駄目かもな。
芽が無い。
挫折を心から本当に強く意識したのはこれが初めてだ。
指がこわばって動いてくれない。
ガチン・コチンと、ぎこちない指・手・腕の動きに苦しめられる。
思うに、小さなころからピアノを始めたとて、やはりどこか途中で挫折していたような気もしてきた。
全体、ピアノ弾き向きには生まれた来なかったのだな。
しなやかで美しい手の動き、腕の動きが生まれる体躯が欲しかった。
神様からもらえたのは、粗雑で些末な動きしか伝令しない脳の働き具合の低さと、硬く融通が利かない、モグラのような手付き。
ブリキの兵隊のような、スムースさに欠けた動きをすることしか出来なくても、それを克服する体の動きがどこかにあるはずだとの一縷の希望を持ち、あれやこれやと試してみる以外に他になにがあるのだろう。