打鍵がうまく行かず、行き詰まりあれこれ試していた。
椅子を高くしたり、低くしたり。
椅子を手前にしたり、後ろにしたり。
手首を上げたり下げたり。
手頸を回転させたり、固定してみたり。
腕の高さを上げたり下げたり。
手首・腕を水平にしてみたり、山なりにしてみたり。
指を平らにしてみたり、立ち上げて上から弾いてみたり。
脱力の感覚を得るため、手首を別の手で押さえて打鍵してみたり、手首の力を抜いて鍵盤に置いてみたり。
でも手首が固く締まってしならない。
鍵盤を舐めるように弾いてみたり、指の角度を変えて見たり、指の打つ位置を奥の方にしてみたり、手前にしてみたり。
指の打ち込みを弱くしたり強くしたり。
あれこれやるたびに、弾けていた曲もどんどん・ますます弾けなくなる。
焦る中、ついに簡単な曲さえ弾けなくなる。
半ばあきらめかけ、放棄気味にした打ち方が良かった。
指の高さ、打ち込む角度、強さを調整しているうちに、ふと思いタチ、指を鍵盤から離し気味にして叩き気味に弾いてみたのだ。
今迄パソコンのホームキーに指を置くように指をピアノの鍵盤に常にくっ付けてきた。
そうでもしないと、鍵盤の位置が判らなくなるような気がしていたから。
そして、指を鍵盤に置くことで、腕の負担を減らすことが出来ると考えていた。
腕にかかる重力を指側で負担させるため。
指を離して弾くように鍵盤を叩いてみたら、案外間違わず上手く弾けた。
むしろ力が抜けて軽く弾けるようだ。
力が要らず軽く弾けるから、早くも弾ける。
少し前に脱力の神が左手に降臨したときの感覚。
これはもう忘れてしまっていて、”ああこうだった”とは言えない。
だけれども、このスキル(指を離して打鍵する)は、はっきりとした感覚として体得で出来たのだから、これで良い。
数曲弾いた。
メロディーの取り間違いはあるが、鍵を迷い、打ち込みのミスはかなり少なくなった。
以前はこのキーを弾くと判っていても、別の鍵を体が勝手に打っていた。
無思考・無感覚、つまり惰性、勢いだけで打っていたミスが少なからずあり、それが上達の妨げになっていたが、それは指の姿勢や運動に無理があったからだ。
打てないから、体がやむを得ず別のキーを叩いていたようだ。
今迄ずっとその問題の解消に取り組んできた。
そして解決できずに悩んできた。
もうピアノは駄目かと思い詰めていた。
年も年だし、才能もなさそう。
定石通り我流・独学者は一年で終わる…。
自分もその口かと思ったが、少しだけ光明が見えてきた。