以前にも書いているかもしれない。
今のところ、これが要だ。
全てはこれだ。指の独立も、自由で軽やかな腕さばきも。
今までずっと少し後ろに過ぎた。
そう、それは脇の辺り、つまりいつもは体の側面にあって、腕の動きとしては横方向に制約があって窮屈だった。
横方向だけではなく、縦方向にも動きに制約が出ていた。
この姿勢で、常に肩をいからせていた。
まるで、肩が固定され、肘が上下方向にしか動かない、フランケンシュタイン博士のモンスターのように。
常に肩に腕に力が入ったままなのだ。
指にも緊張が伝わる。自由な指の動きの妨げだ。
肘を後ろに引いているから、結果として指が鍵盤から遠くなる。
だから、意識しないまま、恐らく上半身、つまり、体をピアノに近づけていたのだろう、そう、指と鍵盤を近づけるために。
するとやはり、全体に窮屈になって、体の動き、腕の動きが悪くなり、それが指遣いのスムースさに欠けた動きに繋がっていたのだろう。
意識して前に出した。
前に出し過ぎるのも良くはないけれど。
体の前に出した。
前にした肘を位置を保持するため、少しだけ意識的に肘を内に寄せるようにしてみる。
何故か、肘の動きがさらに自由度を増すような感覚だ。
けれど、肘を寄せることに肩の力を使うことになって、全体に力みが少し強く出る。
肩に力が入ってしまう。
この辺りはバランスだ。
上手くやれれば、これでちょっとした進歩が望めるかもしれない。
兎に角、少なくとも肘は体の前へ。
肘が前に出ると、上下方向の自由度が増す。勿論左右にも動き易くなる。
肘が上下に動くということは、打鍵を指だけに頼らず、腕全体を使ってピアノを弾けるようになるということなのだ。
尤も、プロ、ベテランともなればこれは違うのだろう。
上原彩子は、びっくりするほど肘を後ろに引いて、上半身を前の方にズーンと倒して、それでも実に綺麗な音を出していた。
凄いぞ!上原。